重度歯周病とは?具体的な症状と治療法について解説します

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2021.10.22
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歯周病が重症化すると「歯茎から出血する」「歯がグラグラと動く」「口臭がひどい」といった症状が目立つようになります。さらに進行すると歯を支えきれなくなり、抜歯のリスクが高まります。今回は重度歯周病について、症状や治療法について詳しく解説していきます。

 

■重度歯周病とはどのような状態か?

歯周病とは、歯を支えている組織に歯周病菌が感染して発症する病気です。重症度に応じて、歯肉炎と歯周炎の2つに分けることができます。

比較的軽度の歯肉炎は、歯茎にだけ炎症反応が生じていますが、歯周炎まで進行すると顎の骨にまで感染が広がり、骨の破壊が始まります。重度の歯周病になると歯がグラグラと動くのは、顎の骨が破壊されて失われている証拠です。その他にも、「歯茎が下がって歯が長く見えるようになった」「食べ物が詰まりやすくなった」「噛んだ時に歯茎が痛い」などの症状にも注意しましょう。歯茎から膿が出てくると末期症状であり、ほとんどの症例で抜歯が必要です。

 

■重度歯周病の治療法について

重度歯周病の治療は、主に以下が挙げられます。

  • 歯周外科治療(フラップ手術)

歯周病が重症化すると、歯と歯茎の境目の「歯周ポケット」が深くなります。その中で形成された歯石は、歯ブラシによるブラッシングでは取り除けず、歯周病がさらに悪化します。

そこで行うのが「フラップ手術」です。歯茎をメスで切開し、歯根に付着した歯石や汚染物質を徹底的に取り除きます。お口にかかる負担は大きくなりますが、重度歯周病を治すためには必須の処置です。

  • 歯周組織再生療法

歯周組織再生療法とは、歯周病によって破壊された歯茎や顎の骨を再生する治療法です。骨が欠損している部分に自家骨や人工骨、骨補填材などを用いて、歯周組織の再生をめざします。

  • 歯内療法

歯内療法(しないりょうほう)とは、いわゆる“根管治療”です。歯周病の一種ともいえる「根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)」は、重度の虫歯が原因で発症します。根管治療をしっかり行うことで、汚染物質が歯の根の先から漏れ出なくなり、根尖部の歯周炎も改善します。

  • 歯周補綴

補綴(ほてつ)とは、失われた歯の機能を被せ物やブリッジなどで補う治療法です。それを歯周病治療のために行うのが歯周補綴です。具体的には、グラグラと揺れ動く歯を被せ物によって連結して安定させます。

 

■歯周病が全身に及ぼす悪影響とは?

重度歯周病はお口の中だけではなく、全身の健康にまで悪影響を及ぼします。

  • 歯周病菌が血管に侵入して起こること

お口の中で歯周病菌が繁殖すると、その一部が血管内に侵入し、全身を巡るようになります。その結果、血管にも炎症反応が生じて動脈硬化を引き起こします。また、血管内では血栓が作られて血管が詰まりやすくなり、脳梗塞、心筋梗塞などの原因にもなるのです。

他にも、炎症性物質のひとつであるサイトカインが多量に産生されると、血糖値を下げるインスリンの機能が弱くなり、糖尿病を誘発する恐れがあります。

  • 高齢の方は誤嚥性肺炎に要注意

お口の中で繁殖した歯周病菌は、唾液や食品と一緒に気道へ侵入することがあります。これはいわゆる“誤嚥(ごえん)”によって生じる症状で、悪化すると肺炎(誤嚥性肺炎)を引き起こす可能性もあるのです。ご高齢の方は特に注意が必要で、年齢が高くなるにつれて飲み込む力が弱くなります。歯周病菌を含んだ唾液が気道に入り込みやすく、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。

  • 妊娠中も歯周病には注意が必要

妊娠中はホルモンバランスの変化により、歯茎の炎症が起こりやすくなります。また、歯ブラシや歯磨き粉による嘔吐反射がみられるケースも多く、お口のケアが不十分になりがちです。つわりによる食生活の乱れも、歯周病リスクを高める原因のひとつといわれております。

歯周病を放置していると、炎症を抑制する物質が分泌されて子宮の収縮が強まり、早産・低体重児出産のリスクが高まります。お腹の赤ちゃんの正常な発育を促すためにも、妊娠中の歯周病予防が大切です。

 

■治療に関するQ&A

Q.歯石を除去した後にすき間ができて食べ物が詰まりやすくなったのはなぜですか?

A.歯石は、歯と歯の間を隠すように付着しています。治療により、歯石で埋まっていたすき間が見えるようになり、食べ物も詰まりやすくなるのです。歯周病の症状が改善したり、歯周組織再生療法などを受けたりすれば、すき間も少しずつ目立たなくなります

 

Q.歯周病治療後に歯がしみる、食べ物が噛みにくいなどの症状が出てきて不安です

A.治療後に歯がしみる理由は、歯石の除去で歯根面が露出したからです。歯石は有害ですが、歯根面を保護する役割を担うこともあります。

食べ物の噛みにくさも、歯石による支えを失ったからといえるでしょう。歯周組織再生療法やフッ素塗布で歯根面を強化するなどにより、症状は改善していきますのでご安心ください。