妊娠すると歯周病になりやすいって本当?歯周病による早産のリスクについても解説

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2022.07.25
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昔から「一子を得ると一歯を失う」と言われるほど、女性は妊娠すると虫歯や歯周病などのお口のトラブルが多くなります。

とくに妊娠中の歯周病については、早産や低体重児出産のリスクを高めるといわれているため注意が必要です。

ここでは、妊娠中に歯周病になりやすい理由や歯周病による早産のリスク、さらに妊娠中の歯科検診について詳しくお話ししていきます。

 

■なぜ妊婦は歯周病になりやすいのか

女性は妊娠すると、通常よりも虫歯や歯周病にかかりやすくなります。その主な理由に、次の3つが挙げられます。

  • 「つわり」でセルフケアが困難になる

妊娠中は初期から中期にかけて食欲不振や吐き気、嘔吐などを主症状とする「つわり」が生じます。

つわりの症状には個人差もありますが、症状が重くなると歯ブラシを口に入れることすら困難になる方も少なくありません。

そうなると口内も不衛生になりやすく、通常よりも歯周病になるリスクが高くなります。

  • 食事や間食の回数が増える

妊娠による体の変化は、食生活にも影響を及ぼします。

たとえば、つわりの症状が重い時期は気分が比較的良いタイミングでしか食事をとれないことから、普段とは異なる時間帯に食べる機会も多くなりがちです。

さらに妊娠中期から後期にかけて胎児が大きくなると、胃への圧迫感から一度に食べられる量も少なくなるため、おのずと食事や間食の回数が増えていきます。

このように食事のタイミングや回数が変化すると、唾液によるクリーニング作用が追いつかず、口内に歯周病菌が繁殖しやすくなります。

  • 女性ホルモンの影響で口内環境が変化する

妊娠により女性ホルモンの分泌がさかんになると、口内環境にも変化が起こります。

たとえば、妊娠中は女性ホルモンの影響で唾液の分泌量が少なくなり、さらにその性状も粘り気を増すようになります。

唾液には食後の食べかすや細菌を洗い流す働きがありますが、妊娠中は唾液の量や性状の変化によりその自浄作用が働きにくくなるわけです。

また、妊娠中は歯ぐきの一部がコブのように膨らむ「妊娠性エプーリス」という症状を発症することがあります。

これは女性ホルモンの増加により歯ぐきのコラーゲンが増殖したもので、その多くは出産後に自然に消失します。しかし、歯ぐきの膨らみの周囲に汚れが溜まる状態が長く続くと、歯周病を発症しやすくなるため注意が必要です。

 

■妊娠性歯肉炎について

妊娠中に生じる歯ぐきのトラブルのなかに、妊娠期特有の「妊娠性歯肉炎」があります。

ここでは妊娠性歯肉炎の症状や原因、治療法について詳しく解説していきます。

  • 症状

妊娠性歯肉炎は妊娠期に限定した特有の歯肉炎ですが、症状は通常の歯肉炎と同じです。

代表的な症状に、歯ぐきの赤みや腫れ、痛み、歯ぐきからの出血などがあります。

  • 原因

妊娠性歯肉炎の発症には、妊娠による女性ホルモンの増加が関連しています。

たとえば、歯周病の原因菌のなかには「エストロゲン」という女性ホルモンの影響を受けて活動を高める菌が存在しています。

妊娠中はエストロゲンの増加によりこれらの菌の活動が活発になるのも、妊娠性歯肉炎を発症する要因の1つです。

さらに「プロゲステロン」という女性ホルモンが増加すると、プロスタグランジンと呼ばれる炎症物質が増えることも要因として考えられます。

これらの女性ホルモンは妊娠後期になると月経時の10~30倍にもなるといわれ、これにより女性は妊娠中期から後期にかけて、妊娠性歯肉炎を発症しやすくなります。

  • 治療法

妊娠性歯肉炎の多くは、出産後に自然と回復します。しかし、なかには出産後も症状が改善せず、歯周炎に発展するケースもあるため注意が必要です。

妊娠性歯肉炎の改善でもっとも効果的なのは「プラークコントロール」なので、まずは日々のセルフケア(歯みがき)を徹底することが重要となります。

また、安定期に入り治療が可能になれば、歯科医院での歯石取り(スケーリング)やクリーニングで症状を改善できます。

 

■歯周病と早産のリスク

妊娠中の歯周病は早産(妊娠37週より前の出産)や低体重児出産(出生体重が2,500g未満の出産)のリスクを高めることがわかっています。

とくに低体重児出産については、そのリスクが通常の7倍にまで増大するというデータもあるため注意が必要です。

歯周病がただちに早産や低体重児出産を引き起こすわけではありませんが、安全な出産を迎えるためにも、歯周病の治療をきちんと受けてリスクを減らしておきましょう。

 

■妊娠中の歯科検診について

以上のように、妊娠中はつわりや女性ホルモンの変化などにより、通常よりも虫歯や歯周病になるリスクが高まります。

妊娠期特有のトラブルについては出産後に自然に回復するものもありますが、放置したまま病状が進行するケースも実は少なくありません。

したがって、妊娠期は適切な時期に一度歯科検診を受けておくほうがよいでしょう。

妊娠中に歯科検診を受けるベストな時期は、一般に「安定期」と呼ばれる妊娠16週から27週までの間です。

この時期であれば、仮に虫歯や歯周病がみつかっても通常時と同じ治療を受けることができます。

「検診や治療は出産後に」とお考えの方もいらっしゃいますが、出産後は子育てにおわれてかえって通院する時間が取れなくなります。

したがって、妊娠中(安定期)のうちに検診や治療を受けておくことをおすすめします。